“じぶんを生きる”森維久郎先生/未来を描く30人の医師のライフストーリー

 

今回は、腎臓内科医の森維久郎先生のお話をお伺いしました。
森先生は、腎臓内科医で透析にならない医療を目指して活動されています。

森維久郎(もりいくろう)

透析にならない医療を目指す腎臓内科医

腎臓内科.com サイト運営
デジタルハリウッド大学大学院所属
CKD-Onlineプロジェクトマネージャー

Facebook: Iku Mori
Twitter : @korokorokoro196

1990年5月7日生まれ(28歳)

・愛知教育大学付属名古屋小学校
・東海中学・高校
・三重大学
・東京医療センター初期研修
・千葉東病院腎臓内科
・福田内科(2019年4月~)
・赤羽腎症予防クリニック(2020年4月~)

 

「たにんを生きていた」幼少期~中学時代

森先生は幼少期時代、自分というものを出さずに「たにん」を生きていました。
ご両親の経営されている病院は地域の中心となる病院で、森先生はいろいろな方から「あの病院の息子」だと言われてきた過去。
森先生は、それがすごくコンプレックスで、「あの家の子だから」「お金があるから」と言われることで自分を認めてもらっている気がしませんでした。
そのため褒められようと自分を出さずに「たにんを生きる」ようになっていました。

中学生の時までは、他人に嫌われないように「たにん」を生きていました。
しかし、高校生の時、アメフトを始めたことが転機に。
これが人生初の意思決定となります。

 

「じぶん」を見つけ始めた高校時代

高校進学後、森先生はアメフト部に入部します。
このアメフト部が森先生にとって居心地が良く、アメフトにのめりこんでいきました。
この経験が森先生を変えるきっかけになります。
アメフトに全力で打ち込んだ結果、今まで「たにん」を生きてきた森先生が「答えは常に自分の中にある」と気付くことになったのです。

アイデンティティを探した医学部時代

高校を卒業後、地元三重大学の医学部に入学します。
しかし、森先生はとある感情を抱きます。
「医者になりたくない」
森先生は、医学部での6年間をかけて、この「医者になりたくない」という感情がどういう感情なのか明らかにしようと決意。
そのための一つ目の行動として、大学在学中にカナダに2カ月ほど行き、外国人や日本の各地から来た日本人と交流をしました。この経験から、帰国後今まで自分が絶対にやらないことをやろうと決意します。

そこでやったことは
DJとスタバの店員と合コン などなど

今までの自分が絶対やらないであろうことをやって森先生はあることに気付きます。

自分はゼロから作ることが好きなんだ」

 

そこで、大学在学中にカフェを作ります。
建築学科の学生と協力して、空き家をリノベーションして営業しました。
地元の各メディアにも取り上げられたりもしていたようです。

その後、学年が上がり病院実習参加した時にこう感じます。

「いしゃってゼロから作れるしごとなの?」

在学中のカフェなどの経験を通して、「ゼロから物事を作ることが好きなじぶん」と「ゼロから作ることが許されない医者という職業」の狭間で悩んだ末、休学を決意します。

そして5年生の夏、森先生はたくさんの人に会うことにします。
いろいろな方にメールを送り、アポイントをとり、会いに行きました。

しかし、これからのビジョンややりたいことが明確ではない自分に気づき、休学を辞めることに。
その後医学生として一歩先に進む中、一つの決意をします。

「医者であろうと社会的な安定な立場になっても必要になれば外に出る勇気を持とう。」と。

 

研修医時代

研修医の時に森先生はこう思います。
「この医療って正しいのかな?」

救急医としてはたらくなかで透析患者さんで運ばれてきた人を目の当たりにし、目の前の亡くなりそうな患者さんに対して全力を尽くす医療に違和感を感じ、この背景にあるものを解決しようと考え始めました。

しかし、世間の流れは、某アナウンサーが透析は医療費の無駄遣いだとバッシングしていて時期。一方で、現場で診ている患者さんや家族の多く、特に生活習慣病が原因が透析になった患者さんの多くが過去の自分の行動に多少なりの後悔をもっているように感じました。

そこで森先生は腎臓内科医になることを決めます。また、過去の自分の行動を振り返り、様々な事に手を出す事で、地に足が付かなくなる事を自覚していたことが腎臓に絞った理由でした。

 

腎臓内科医になる

「透析患者は自己責任なのか?」

透析患者さんの中で、糖尿病・高血圧が原因で透析になった患者さんは約半数と言われており、多くの症例で自己中断歴・放置期間があると言われています。

患者さんの自己責任と言えばその可能性もありますが、一方でお酒を飲みすぎる自分や、ダイエットに失敗する自分を振り返った時に生活習慣を改める事が出来るかというとあまり自信がありませんでした。

そこで生活習慣にコミットして腎臓医療をやる人間をやろうと決めます。

図にもあるように糖尿病歴5~15年では、腎機能を示す指標であるGFRの値に変化がありません

GFRに変化がない時期にも、腎臓が障害されていることを患者さんが認識していないということが分かりました。

また蛋白尿という腎臓の障害を示すサインがあり、それを患者さんにfeedbackする事で現状把握が出来ることを知っている患者さんが意外と少ない事が判明しました。

さらに糖尿病性腎症の第2期の患者さんは、糖尿病を適切にコントロールすれば第1期に戻ることも可能。第3期になってしまうともう戻すことは難しい。
この2期の時期までにどう適切な情報を患者さんに提供するかが大切だと気づきます。

この経験から森先生は単に情報が不足しているだけなのでは?と感じました。

そこで森先生は、患者さんに適切な情報を提供するためにブログを書くようになります。

https://腎臓内科.com/

4時間で20人程度の外来だと一人当たり5分程度しか話すことはできない上に、患者は話した内容をほぼ忘れてしまう。
そこで外で情報整理をする場を設けたいということでブログを書き始めた。記事を読んでもらってから外来に来てもらうことで、共通言語ができるため話が共有できる。そうすることで結果的に治療中断が減少につながったとのこと。

ブログを運営する上で気を付けているのが手段と目的を混在させないこと。『伝える』ために、『読まれる』必要がありますが、『読まれる』ことが目的になり、安易に不安を煽ったり、医学的に重要じゃない事をあたかも最も重要な事をみせることは絶対しないようにしています。

このブログの経験を通して感じたのは、従来の医学では解決出来なかったけど、もしかしたら他のアプローチで解決出来るかもしれないということ。

現在の成人死亡の主要な決定因子は、喫煙と高血圧です。
しかし、多くの患者さんが喫煙は身体に悪いとわかっていてもやめられない。
この「分かっているのに出来ない」というのは大きな問題。

このわかっているのにできないにどうアプローチするのか。これが医学だけでは解決できな大きなミッションです。
アメリカではBlueStarという糖尿病の生活習慣改善のためのアプリであったり、日本でもCure App禁煙やあすけんなどのアプリやシステムを用いて、生活習慣を改善しようという流れが見られます。

こういった医学以外からのアプローチを勉強するために森先生はデジタルハリウッド大学院に入学しました。
今、テクノロジーの世界で注目されているのはAIやVRなど。
しかし、森先生は今のありふれたテクノロジーを用いていかに現状の問題を解決するかということに重きを置いています。
デジハリに入ったことでテクノロージーライクな解決法ではなく、既存のテクノロジーを用いていかに現場を変えていくのかということが大事なんだと気づくことができた。

そこから森先生は、Technology Medical Business Politicsの4つを駆使して慢性腎臓病を解決していくという決心をしました。

この4つをバランスよく見えているのは自分しかいない。
そういう想いがあるそうです。
そして、森先生の中に大学5年の時のとある思いが蘇ってきます。

「医者であろうと社会的な安定な立場になっても必要になれば外に出る勇気を持とう。」

 

そして森先生は、腎症重症予防クリニックの開設を決意します。
クリニックの開設にあたって重要視しているのは以下の5点。

ビジネスモデルとしてどうしたら成功するのか、模索する日々が続いています。

最後に森先生から伝えたいことは

「じぶん」を大事にすること。

自分にとって心地よいことや自分が嫌だと思うことを大切にすること。そして自分の中でのルールを大切にすること。

 

そして、医学生に向けて。

医学生は自己決定をする機会が少なくなりがち。職種を決めるというのはアイデンティティのひとつであるが、医学生は職種決定というアイデンティティの重要な部分をやる必要がない。だからこそ医学生は、意識的にじぶんを探す機会をつくってほしい。その中で自分のキャリアを形成していってほしい

そうおっしゃっていました。

 

(文=中村恒星(@kkkkosei777)

 

 

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ABOUTこの記事をかいた人

中村恒星

富山大学薬学部(4年制)卒。北海道大学医学部2年。 ミャンマー、隠岐の島での医療ボランティアの経験から医療を制度面から変える必要性を感じ、医学部学士編入を受験。 自身が難病を患っていることもあり、難病を情報発信面から変えるべく活動中。 病理学教室でがん幹細胞の研究に従事している。