“人生の師との出会い”加藤浩晃先生③ /未来を描く30人の医師のライフストーリー

医療4.0に登場する未来を描く30人の医師のライフストーリーに迫る”医療4.0×医師ラボ“企画。第1回目はこの本の著者である加藤浩晃先生にその半生を語っていただきました。今回はビジネス時代から現在までの最終話をお届けします。

(第1話 学生時代までの話はこちら) 

(第2話 臨床医時代の話はこちら)

(この記事は6/23に行われた医師ラボ朝活vol.7の内容の一部を記事にしたものです)

加藤 浩晃(かとう ひろあき)

医師、デジタルハリウッド大学大学院 客員教授

遠隔医療、AI、IoTなどデジタルヘルスの政策提言にも携わる、元厚生労働省官僚・現役医師。1500件以上の手術を執刀、手術機器や眼科遠隔診療サービスを開発。「医療現場」「医療制度」「ビジネス」の3領域を横断的に理解し、企業の顧問・アドバイザーや厚生労働省医療ベンチャー支援事業サポーター、経済産業省J-startup推薦人などを務める。日本医療ベンチャー協会理事、アイリス株式会社取締役CSO、MRT株式会社社外取締役、東北大学非常勤講師、眼科専門医。

非眼科医のニーズからDtoDアプリを開発

大学院で非眼科医への眼科教育をやっていく中で、プライマリケアの先生の友達が増えていきました。するとその先生たちからメールで眼科相談されることが増えてきたんですね。日本では僻地、離島、在宅、院内に眼科がない病院などで、眼科以外の医師が眼科診療をせざるを得ない場面がたくさんあるんです。

最初は相談にすぐ対応できるくらいの相談量だったんですが、1年もたたないうちに、1日に数件の問い合わせが来る時もあり、普通のメールを使っていたので、返信を見逃してしまっていたり、セキュリティが気になるようになってきました。

それでDr toDrの専門のサービスが必要だなと思っていたところ、エクスメディオというベンチャーが皮膚科で”ヒフミルくん”というDr toDrのアプリ開発をしているということを知り、眼科版の”メミルちゃん”を一緒にに開発させていただきました。

メミルちゃんは、眼科でない医師が、目の診察をせざるを得ない場面のときに、スマホやデジカメで患者さんの目の撮影をして、15項目程度の問診項目に回答して送信をすると、眼科専門医から診断や治療方針、紹介の必要性の返信が来るサービスです。今もエクスメディオの「ヒポクラ」というサービス内で、眼科コンサルトとしてDr toDrの眼科相談は行われています。

ビジネス入門時代

さらに2015年6月ぐらいからは本格的に院外の医療者以外の人たちとの交流が増えてきました。

堀江貴文さんとの出会いは堀江さんのオンラインサロン(HIU:堀江貴文イノベーション大学校)です。

僕はそれに入っていて、その中で堀江さんと一人10分話せる寿司会という企画があり、関西でも開催されることになったので行ってみることにしたんです。この寿司会の会費はかなり高いんですけど、実は奥さんから「人生が変わるかもしれないから行ってみたら?」とプレゼントしてもらいました。それで服とかも「会ったとき舐められたらあかん!」とスーツを買ったりして気合いを入れて会いにいきました(笑)。

堀江さんと会って僕は予防医療や医療費の問題についてこんこんと話をしました。すると堀江さんもちょうど予防医療に興味があったようで、そこから堀江さんが立ち上げようとしていた予防医療普及協会の立ち上げに誘ってもらいました。当時、土日にある1~2時間の会議のために京都から新幹線に乗って東京の六本木でおこなわれていた会議に参加して、すぐまた京都に戻る生活をしていたのを覚えています。

予防医療普及協会は、予防医療についての正しい知見を集め、啓発し、病気を予防する具体的なアクションを推進していこうという協会で、「ピ」というピロリ菌の除菌普及プロジェクトを進めていきました。この協会ではクラウドファンディングとかオウンドメディアとかをやって、ビジネスはこういう風にやるんだというのを学んでいきました。この活動はいい意味でも悪い意味でもバズりました。途中すごく怒られたりもしました。

でもこの活動のおかげでビジネスとしては素人に近かった自分が、高密度に日本でも有数のビジネスマンの人たちに囲まれながら、時にはそんな事も知らないのかってこともありながらたくさんノウハウや経験を吸収することができました。

師である武蔵先生、池野先生の教え

さかのぼると、僕に一番最初にビジネスのいろはを教えてくれた師匠は、大阪の眼科医の武蔵国弘先生です。武蔵先生は今3社ぐらいの社長をしながら、開業医としても2つのクリニックの経営もしている規格外のドクターです。

2009年頃、僕は当時、某医師国家試験予備校の非常勤の講師をしながら、医師向けの色々なサービスの打合せに時々東京に呼んでもらっていました。打合せは予備校内もしくはコーヒー店。僕としては京都から東京に交通費を出してもらって行くことができるし、自分の話した企画が実行されて、そして反響があったりするのがめちゃくちゃうれしいと満足していました。

すると武蔵先生から怒られるんです。「お前は自分の出せる価値はコーヒー一杯分くらいだけか?どれぐらいの価値を自分は出しているんだ?」と。「医師の知恵や経験に対して相当の対価をもらうべきだ」と教えられ、そこからだんだんと自分が受ける相談などに対してお金をもらうようになっていきました。

それから2015年に開催された「Health 2.0 Asia 」というイベントで武蔵師匠のさらに師匠、つまり大師匠であるスタンフォードの池野文昭先生にお会いしました。

その時、池野先生がおっしゃっていた言葉は金言だらけだったんですが、その中で一番心に残っているのが「アメリカではチームに医療者がいない医療ベンチャーは優良な投資対象と思われない。」ということでした。

医療現場での現場感や課題感がない医療ビジネスは良くないという話をされていて、その時僕はこう思ったんです。「誰もが簡単にチームに医療者を迎えて事業ができるわけではない。だから自分は医療以外の領域の人と医療者を繋げる人になりたい。」このとき僕はそういう人生を歩んで行こうと決めました。

一日3万円分の勉強をする

2016年からは厚生労働省に出向して仕事をしていました。厚労省時代はこんな仕事をしていました。

厚労省で働く国家公務員は実は労働3法の適応除外のため、労働基準法とかは関係なく、どれだけ働いたとしてもブラックではないんです。残業代も最初から予算が決まっていて、その中から分配するのでほとんどつきませんでした。いつも終電ぐらいまで働いていましたが臨床医として働いていた時に比べると年収で1000万ぐらい落ちました。

そこで考えたんですけど、下がった1000万を365日で割るとだいたい一日3万円ぐらい。つまり一日3万円をかけて厚労省で勉強させてもらっていると考えることにしたんです。それで「厚労省にいる時には絶対一日3万円分吸収するし勉強する。」と心に決めて働いていました。

今取り組んでいること

今現在やっていることは大まかに分けると眼科の臨床の他に、事業開発支援(事業投資助言)、研修・セミナー、コミュニティ運営などをやっています。
事業開発支援に関しては厚生労働省のMEDISOという医療ベンチャー支援事業の非常勤アドバイザー、事業投資助言の方は経済産業省のユニコーン企業を日本から創出するというJ-Startupという事業で、医療・ヘルスケア領域のベンチャーの推薦人をしています。

そして、厚労省を辞めてからありがたいことに講演で呼ばれるようになってきて、講演回数がすごく増えました。辞めた去年は1年間で講演や研修・セミナーをやった回数は94でした。今年はもっとペースが多く、先月や今月は月10回以上講演しています。一度は年100回を超えるまで頑張ろうと思っています。どうせなら94回だった去年にあと6回頑張っておけばよかったんですけど()

コミュニティ運営としては DMMオンラインサロンで「ヘルスケアビジネス研究会」。これは現在全国からヘルスケアビジネスに興味のある医療者や起業家、大企業の人など170人以上の規模になっています! あと、毎月第1火曜日朝に医療ベンチャーと行政が顔を合わせる場として定期的に行っているJapan Healthcare Meetup、そして、日本医療ベンチャー協会(JMVA)の 理事としても運営に関わっています。

自分がこれらの多岐にわたる活動に取り組む中で悩んだり困ったりする時、相談に乗っていただいている3人のメンターがいます。産業医の大室正志先生MRT株式会社の馬場稔正社長、守屋実事務所の守屋実さんの3人です。この3人のメンターにいつも学ばせてもらって助けてもらっています。

 

その他にも最近はデジタルハリウッド大学院で、デジタルヘルスが好きな面白いイノベーターな人たちが集まる大学院のゼミ“デジタルヘルスラボ”で客員教授をさせてもらっています。

厚労省に入る前の京都で眼科医をしていた時からオンラインで知っていたお茶の水循環器内科院長でデジタルハリウッド大学院特任准教授の五十嵐健祐先生とお互いに強みを補完し合いながら、日本で一番のデジタルヘルスが学べる場所を作っています。

今年はおそらく日本でデジタルヘルスをやっている大学院の中で日本一の16名の院生がいます。
お茶の水を医療者とクリエイターが交流できる場所にしようという「お茶コンバレー構想」なんかも進んでいます。

デジタルヘルスラボ

未来の医療を創る人をつくる

ヘルスケア産業の発展のためには医療とそれ以外の領域を繋いでいくことが大切です。そして未来の医療を創る人をつくる。これが僕のやりたいことです。やっぱり原点は教育なんですよね。教育で僕自身が困ってきたこととかを伝えたくて、そこで金儲けをしようとかの意図はなく、未来の医療を作る人を純粋に応援したい。

そしてそれは今回出版された僕の自著「医療4.0」にもつながっています。

医師でこんな活動をしてる人がいるんだよともっとたくさんの人に知ってもらいたい。自分がそれを伝えられる立場にいるのなら、伝えて気づいてもらいたい。

だから知ってる医師や興味のあった医師のインタビューだけでなく、ぜひ30人すべての医師のインタビュー部分を読んでほしいと思っています。必ずたくさんの気づきがあるはずです。
今日は朝早くからありがとうございました!

 

 

〈文=佐々木祥貴(@7yoshitakas)〉

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