“不安を克服し、ワークライフインテグレーションの時代へ”原正彦先生③/未来を描く30人の医師のライフストーリー

医療4.0に登場する未来を描く30人の医師のルーツと半生、その生き方に迫る”医療4.0×医師ラボ“企画。第7回目は原正彦先生にその半生を語っていただきました。今回は第3話、不安を克服し、ワークライフインテグレーションの時代へについてお届けします。

(この記事は9/22に行われた医師ラボ朝活vol.7の内容の一部を記事にしたものです)

一般社会法人日本臨床研究学会代表理事、株式会社mediVR代表取締役社長、循環器内科医

2005年島根大学医学部卒。米国心臓病学会から世界の若手トップ5に3度選出された知識と経験を生かし、臨床研究から産学連携まで幅広く活躍。代表を務める株式会社mediVRは、経済産業省主催のジャパンヘルスケアビジネスコンテスト2018でグランプリ受賞。

不安を解消するには

ただ、皆さん若いうちのキャリア形成は悩むと思います。何が正解かわからないから悩む。そして何に悩むのにはいくつか理由があると思っています。

例えばまず不安だからということがあると思います。どんな不安があるかというと、相談を受ける中で皆が共通して持っているのが、自分が努力して手に入れたものが無駄になるのではないかという不安です。テクノロジーやAIに取って代わられることによって、自分が歩んだ道がゼロになってしまうのではないかと心配しています。

ゼロにならないためには、あるスキルがゼロになっても生き残れるようにパラレルキャリアにすることで、するという手法と、取って代わられにくいスキルを身につけるという手法の2つのパターンがあると思います。

機械の方が得意なことには、例えばGoogleマップを例に挙げられます。僕らが地図を広げて道を考えるよりも、早く正確に目的地に導いてくれます。また、AIは単純作業が得意なので、画像診断などは取って代わられていくと思います。

逆に、人の感情の動きに関する部分は今の技術ではまだ機械では置き換えにくい。

今の二十代くらいの人はミレニアル世代といって、物欲がほとんどない。現代は物質が充実してきて、何かを買うことではなく、こうして集まるイベントを開催すること(つまり体験)に価値を見出す世代なのです。

テクノロジーの発達によって様々なものが機械に置き換わっていく中で、これは当たり前の選択で、体験にしか価値がなくなっていく。だから、こういったところに来ている皆さんはおそらく感度が非常に高い。ですので、そういう部分の気持ちを大事にしています。

機械は今の所、自ら欲求を持つことはありません。人は欲求を持つという点が機械との違いなので、自らの欲求に従って素直にスキルを身につけていくのがいいのではないかと思います。

それから治療のアプローチも、病気だけではなくその人の経済的状態や家族との関係など、機械では捉えられない全人的で複雑な思考過程がこれからより重要になっていくのではないかと思います。

人と人とのつながりを大事にするミレニアル世代の中では、医者の価値はより上がっていくのではないかと思っています。単純に風邪の人には風邪薬で、という風に処方している医者は機械に置き換えられて、全人的に人を見れるスキルを持った医者はどんどん重要になっていきます。

あと不安になる理由の一つには、情報を知らないということがあります。自分が情報を持っていないと不安になる。だから自分でしっかり情報を取りに行くことですね。そうすることで不安というものはかなり削減できます。

患者さんが薬の副作用を心配するのも同じことですね。過剰に心配してしまう人にも、ちゃんと解説してあげれば怖く無くなるんです。だから適切な薬の服用法と、副作用の情報を正確に教えてあげれば、今まで薬を嫌がっていた人でも飲んでくれるようになります。

だから僕はインプット能力、つまり情報収集能力を若いうちに身につけておくべきだと思います。

あとは、皆さん小中高と一貫的な教育を受けてきていて、いわゆるマインドコントロールをされているんです。思考停止していたり、思い込みがある。だから常識というものは疑ってかからないといけない

例えば職業を一つにしなければいけないというのは完全に教師から教えられたマインドコントロールの一つです。日本が高度経済成長の時には、ロボットのように働く人間を社会が欲しかった。だからストラテジーとしては適切だったと思います。

しかし今はそれが当てはまらなくなり、そういった職業がなくなる可能性があります。

例えばその視点から考えると、専門医って必要なんでしょうか。

掛け算で自分の価値をだす時に、専門医というのは患者さんを治療するという点において全くメリットがないんです。専門医を取るための期間やエフォートをスパッと切ることで良い意味で自分らしさを出すことができるのではないかと思います。

そういう意味で海外留学もほとんど意味がない。今は海外で有名な先生でもスカイプなどを使えばコミュニケーションを取れるようになっています。

留学先にしかないラットのラボがある、動物モデルがある、といった場合は行くべきだと思いますが、日本でもできることを海外でやる必要はないと思います。コミュニケーションコストも高いし、なかなか思いも伝わらないですし。

そういうところにリソースを集中すべきではないと僕は思います。

だから話は変わりますが、臨床研究で英語論文を書くときに、英語で文章を書くことに時間を使うよりも、日本語でしっかり論文を書いて翻訳してもらう方がよっぽど効率がいいと思います。

つまり自分が本当に英語の力をつける必要があるのかちゃんと判断しなければならないということです。

過去は変えられる、ゴールはどんどん修正していい

キャリアパスの中で、僕みたいに途中でゴールを修正してもいいんです。一度決めたことに従わないといけないと思っている人は多いですけれど、そこはどんどん変えていいんです。

今の日本は、過去の自分の発言を否定することをすごく嫌がっていて、だから歪みが生じて、最適化されずに様々な問題が起こっています。何も物事が前に進まなくなってしまっているんですね。

あとはキャリアコンプレックスというものを抱えないことですね。

例えば自分が第一志望だった大学に受からなかったことに対して、大人になってもずっとコンプレックスを持っている人がいます。それは間違っていて、過去というものは変えられるんです。

例えばパラリンピックで下半身麻痺になった人が何かの種目で優勝したという時に、その人が下半身麻痺になった瞬間というのは絶望だったと思います。人生のネガティブなイベントだったはずです。しかしパラリンピックで優勝した瞬間に、下半身麻痺というのは実は成功のスパイスに変わるわけです。

過去は変えられる。だから今が充実していれば過去というのはスパイスにしかならないんです。

さらに、起業は悪だ、といったことを上の人にとやかく言われると思うのですが、そうではないですよね。

社会的にいいことをするから、お金を稼げる。フランス料理屋で高いお金を払ったからその対価として美味しいものを食べられるという事と同じですよね。

ただその中で一つだけ苦言を呈していて、マルチタスク、パラレルキャリアは良いのですが、選択と集中が大切です

どんなパラレルにするかは選ぶべきですし、自分が行ったことには責任を持つ事ですね。

責任を持つというのは、やり遂げるということではなく、方向転換するときに、『方向転換するから、ごめんね』と謝れること、それが責任を持つということです。

この辺が多動力、パラレルキャリアというワードが普及している中で忘れられがちな点だと思います。

バランス→インテグレーション

もう一つキャリアに迷う理由は、ワークライフバランスを意識しすぎて仕事と人生を分けて考えてしまうからです。

人生は80−100年あります。その中で2060歳までの40年、つまり人生の半分は仕事なんです。仕事の時は頑張れと昔の人は言いますけれども、そうではありません。

仕事とは人生そのものなので、両者をしっかり一致させて自分の好きなことを仕事にするといいと思います。

僕は臨床研究が好きですが、今それでお金を稼げているんです。だから本当に遊んでいるような感覚なんです。遊びが仕事で仕事が遊びという感じです

要するに、自分の好きなことでマネタイズする方法を一生懸命考えたんです。

一度、ワークライフバランスという常識を疑ってみてください。

原正彦先生の”世界を魅了する臨床研究”:この続きは近日公開です。

 

〈 文 = 江崎 聖桜 〉

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