阿部 吉倫先生② / 未来を描く30人の医師のライフストーリー 

医療4.0に登場する未来を描く30人の医師のライフストーリーに迫る”医療4.0×医師ラボ“企画。今回はUbie株式会社阿部吉倫先生にその半生を語っていただきました。

(第1話 大学時代までの話はこちら)

(この記事は7/28に行われた医師ラボ朝活の内容の一部を記事にしたものです。)

阿部 吉倫 (あべ よしのり)

Ubie株式会社共同代表、医師

Ubie株式会社共同代表、医師。2015年東京大学医学部卒。東京大学医学部付属病院、健康長寿医療センターで最先端医療と高齢者医療の最前線を経験。その傍ら膨大な文献からデータベースを生成し、問診質問選定アルゴリズムを開発した。2017年、医療現場を技術で手助けすべく、Ubie株式会社を創業。

Ubie共同創業者久保との研究開発

時を同じくして久保(Ubie共同創業者)が交通流シュミレーションの研究室に入りました。今でいう自動運転に繋がる研究で、交通流を分析して、事故が起こる確率をシミュレーションしたりする研究室です。そこの教授が、「研究テーマは何でもいいよ、何でも持ってきて」と言ったそうなので、「医療のAIがやりたいです」と久保が提案したら、「何言ってんだ、うちは交通流だ、却下」とあっさり却下されるという(笑)。それで久保が「医療のAIがやりたい」と僕に相談にきたんです。

当時はアキネーターというサイトが流行っていました。ランプの魔神が質問をしてきて、二択の質問に答えていると、自分が頭の中で思い浮かべたキャラクターを当ててくれるんです。歴史上の人物とか、凄くニッチなキャラクターまでも当ててくれて、それが出来るなら医療でも症状から疾患を当てられるだろうと考えました。

そこで2013年に、久保と研究開発を開始しました。その前年、IBMも症状から病気を当てるAIを開発するべく、大量の電子カルテからデータを読み込もうとしたようですが、上手くいかなかったようです。電子カルテは人によって書く内容が全然違い、データが不揃いだったことが原因でした。

IBMが失敗してくれたお陰で、僕たちは別のアプローチでやらないといけない事が分かりました。そこでまずは内容が統一化された綺麗なデータを集めようと思い、書籍や論文からデータを取ってくることにしました。楽しい作業ではなかったですが、当時食事部以外は暇だったのでせっせとやりました。

2年くらいはアルゴリズムがうまく機能せず結構辛かったです。病気のデータは胆嚢炎、髄膜炎と集まってくるんですが、データ数が足りないし、どの症状を質問として聞けばいいのかがよくわからない。症状を全部聞くことで、ある程度の疾患を絞る事は出来ますが、ものすごい数の症状の全てを聞くわけにもいかない。先程のランプの魔神のように、答えを出すまでの質問は20-30個ぐらいで抑えたい。そんなことを思いながら開発を進めて行きました。

2015年に医学部を卒業して、研修医になりました。すると、機械の気持ちがわかった上で実際の臨床を経験することで、どういう軸で質問選定をすればいいのか徐々に分かってきました。ある日思いついたアルゴリズムを放り込むと、急にAIが良い質問を繰り出すようになってきて、やっぱりできるんだと分かりました。 

同じ時期、東大病院での研修医時代は事務作業に忙殺されていました。患者さんを診る時間は1日1時間あるかどうかでした。研修医2年目は健康長寿医療センターに行き、ここで事務作業量は大分減りました。とはいえ、全然楽ではなくて、病院って事務作業が絶対的に多いんだと気づきました。

健康長寿医療センターには、急性期の患者さんのみならず、手遅れの患者さんも多く来院します。当時、将来は消化器内科か血液内科に進む事を考えていましたが、来院した患者さんを治療しているだけでいいのか、手遅れになって来院する前に出来る事があるのではないかと凄く悩みました。

臨床で感じた課題を解決するためにUbieを起業

病院で感じた課題は二つあります。一つ目は、医師が、医師にしかできない仕事以外にリソースを非常に取られる事。二つ目は、患者さんが、いつ病院に来ればいいか自分で判断できないという事。つまり、自分の症状がどの病気に関係するか患者さんには分からないという問題です。これらを解決しなくてはいけないと思いました。

解決するシステムを作って使ってもらうためには、どういう形が一番いいのか?それを考えてみると、今一番世界を変えているのは株式会社でした。ハコはNPOでも研究室でも何でもよかった。けれども僕らの生活を一変させ、無くなったら困るサービスをやっているのはAmazonやFacebook、Appleなどの株式会社。それらを利用しない手はないと考え、病院で働く前にはあまり考えていなかった起業に至りました。

まずやったのが、患者さん向けの症状チェックアプリケーションのリリースです。これは起業する前、2016年にファーストローンチしました。最初は、これでは誰も使わないだろうと思っていましたが、少しずつ内容を改善して、ダウンロード数も増えてきました。そこで、これはいよいよ会社にしてもいいのではないかと考え、法人化しました。おかげさまで今ではダウンロード数は3万を超えています。しかしこれは1円も儲からないので、会社としてはどうなのかと。Facebookも8年間、お金を儲けずにやっていたのでそれでもいいんじゃないかとも考えました。とはいえ、会社としてやる以上、これ一本でいいのかと。そこで次にAIの問診票を作ろうと考えました。

プロダクトを作る上で座右の書にしている本があります。「リーン・スタートアップ」という本で、その中に「このプロダクトを誰が使ってくれるのかを検証しましょう」と書かれています。知り合いの先生に聞いて検証してもよかったんですが、もっとピュアなニーズが知りたくて、メールを作ってたくさんの人に送りました。「こういう商品を考えていますがどうですか?最初のユーザーになってください」と。今考えると迷惑メールのようなものでしたが、120件メールをして6件返事をいただきました。全体の5%、その人たちに実際にインタビューに行き、使って下さることになった人は3人。全体の2.5%というまずまずの結果を受け、作る事を決めました。

しかし、そうして最初に出来上がったものは惨憺たるものでした。メインの症状が200種類くらいある中から主訴を選ばなければいけないし、更にそこから紐づいた症状が40個くらいあり、選んでたら日が暮れてしまいます。しかも、患者さんによっては選択肢に症状がないという方もおり、そうすると問診にならない。ユーザーインタフェース上にも問題があり、お話になりませんでした。当初僕たちは自社はAIの会社だと思っていましたが、AIは手段に過ぎず、プロダクトでもっとも大事なことはデザインだということに気付かされました。今では絶えまない学習と改善によりそれらの問題を解決して、最近ではようやくクリニックのみならず病院にも導入していただけるようになりました。しかしこれは第一ステップに過ぎません。ここから医療現場の課題を解決するプロダクトを矢継ぎ早に出していきたいと考えています。

Ubieが求める人材

今、採用に力を入れています。ご興味をお持ちの方は何かしらで関わっていただけると嬉しいです。我々は医療ITの会社なので、医療課題を解決して行きたいと考えています。
まずは
プロダクトをデザインすることからです。Ubieのプロダクトを使うと、従来の体験がこんな体験に変わる、という部分をデザインしていきます。また僕たちはデータの会社でもあるので、こういうデータがあればこういう機械学習的なソリューションが使えますよね、というところまで含めてデザインと考えています。

デザインが決まれば、次にそれを実現して行くエンジニアリング。エンジニアリングはいかにスケーラブルに設計できるか。ただ動くだけでなく、汎用性と拡張性がある広範なソリューションを提供する必要があると考えています。

うちにはエンジニア、データサイエンティストは最高の人材が集まっているので、デザインの面で医療現場と密に接していて、現場にはこういうプロダクトがあるべきとか、臨床上はこういうことがしたいなどを考えるUXデザイナーやプロダクトマネージャーを募集中です。

そしていいものが出来た時にはそのプロダクトを広げなければならない。Public Relation、つまり情報の発信です。うちの会社はギークしかいないのでこの部分がまだまだ弱いです(笑)。もし得意だよ、という人がいたらぜひご協力ください。

本日はありがとうございました。

 

〈文=和田 伊織〉

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