再受験生インタビューT.Sさん〜番組ディレクターから医学部へ〜(1)

元テレビ番組制作ディレクター。卒業から4年後の医学部再受験。壮絶なディレクター生活を経て自身の人生について考え直し、医学部に入りなおすことを決めたという北里大学医学部2年生のT.Sさん。社会人時代から今の医学部生活、将来の話までをお話しいただきました。今回はディレクター時代までの話です。

 

 

ずっとディレクターになりたかった

佐々木 以下S) これまでの経歴を教えてください。

T.Sさん 以下T)出身は北海道で、1浪して早稲田大学人間科学部に入りました。昔からテレビ番組を作りたいと思っていて、早稲田に入ったのもマスコミ業界に強かったからです。その後、大学を卒業して無事、テレビ番組制作会社に入ることができました。最初はアシスタントディレクターをやって、それから番組のディレクターになりました。

S)なぜ番組を作りたいと思ったんですか?

T)中学生の時、テレビでやっていたノンフィクションのドキュメンタリー番組を見て、それがとても印象に残っていたんです。シングルファザーの日常生活を追ったものだったんですけど、父親と娘の喧嘩シーンなんかがあって、娘が思春期で父親に反発していがみ合っているんだけど、少しずつ距離を縮めて親子になっていくというような話でした。僕はその番組を通して、自分の半径何メートルの世界の外に全然違う、自分の知らない世界が広がっているということを知ることができました。ああ、こういう世界もあるんだなと感動したんです。取材をすることで自分とは違う他人の人生を追体験できることがとても素敵だと思いました。

S)素敵ですね。

T)その時これはもう絶対ドキュメンタリー番組のディレクターになりたいと思って、そのまま就職まで一直線に行っちゃいました笑。就活ではマスコミ系しか受けませんでした。ゼミの先生には他の業種も受けろと言われたけど完全に無視しましたね笑。その時はそれしかなくて、それ以外は考えられなかったんです。

S)攻めてますね(笑)。

T)思い込むとわーっと行っちゃうんですよ。そう考えると、医学部に行くことを決めたときも同じなのかも。そうじゃないと今医学部には来ていないです。

S)なるほど笑。 医学部にはどうして行きたいと思ったんでしょうか?

T)まず仕事を辞めた理由から話そうと思います。

 

壮絶なディレクター時代  

T)仕事を辞めようと思った理由は大きく二つあります。

一つ目はとにかくディレクターの仕事がめちゃくちゃ大変だったんです。体力的にも精神的にも厳しい。忙しい時期は平均睡眠時間2〜3時間ほどで、会社には終電で帰れなかった社員たちが、仮眠をとるため廊下に転がっていて、まるで地獄絵図のようでした。

S)すごいですね……

T)また、いつ休みが取れるかわからないというのも辛かった。普通の仕事だったら土日は休みですよね。それがわかってるから、休みに向けて木曜、金曜頑張ろうという気になりますよね。でもそれが僕の場合はありませんでした。休みが不定期で、週末まで頑張れば休みだ、っていう目標がなかったんです。そしてある日突然、明日は休みだ、っていきなり告げられるんです。そのいきなり訪れる休みの日に僕はうまく息抜きができなかった。だからプライベートの時間というものがほぼ皆無に等しくなってしまっていました。このままディレクターを続けていく以上、この生活が20年、30年と続いていく……今後、結婚したり子育てをしたりするときのことを考えると、このままじゃ幸せになれないんじゃないかと思ったのが大きなきっかけの一つですね。

S)そんなに大変だったんですね。もう一つの理由は何だったんでしょうか?

T)もう一つの理由は、ディレクターの仕事が肌に合わないと感じるようになったからです。番組制作というのは放送が終わった後に視聴者からの良い反応をもらえたときの喜びはあるんですけど、その一方で、番組を作る過程で傷つけている人がたくさんいます。実はドキュメンタリーで取材される人って、テレビに映ってる姿と本当の姿がすごく乖離していることが多いんですよ。

S)そうなんですか?!

T)はい。それを僕らは平気で放送しなければいけなくて、それがすごく申し訳ないと思いました。今思えば僕が中学校のとき感銘を受けたドキュメンタリーも、編集されて本当の姿は全然違ったんだろうなと思います。結局、番組は視聴者にウケるわかりやすいストーリーを作りたがります。そのわかりやすく面白いストーリーは取材前の企画書を出す段階で既にほとんど出来上がっているんです。そしてそのストーリーを完成させるためのパズルピースを集めて、埋めるための取材を行っていく。その過程で、取材される人は本来の姿ではなく、意図的に作られた姿になってしまう。この仕事はいろんな人の人生に向き合えはするけど、その中の面白い部分しか切り取っていない。本当の姿を見せられないなら一体自分は何をやっているんだろう、この仕事は一体何なんだろうと疑問に思うようになりました。

S)なるほど……

T)おそらく一緒に働いている他の人たちも同じ疑問を持っていたと思います。そこで仕事だからと割り切れる人は続けられるんだと思います。でも僕にはそれができなかった。今考えると仕事に対して真面目になりすぎ、入れ込みすぎてたんでしょうね。自分の気持ちをごまかして続けていたせいで精神的に追い込まれていました。

 

人生について考え直す

S)それらの理由から辞める決断をされたんですね。

T)はい。就職して最初は頑張って働いていたんですけど、先ほど話したような理由があって4年ほど働いた26の時、ついに体調を崩してしまい、一ヶ月ぐらいお休みしたんです。その時は限界に近いぐらい精神的に追い込まれていて。それで休んでる時に一度自分の人生について振り返り、今後の人生について考えました。このまま仕事を続けてやっていく自信を失っていたので、じゃあ辞めようかなと。そこで次に一体どうしようかと考えました。就活しようか、それとも全く違う道に進もうかと考えている時に出てきた選択肢の一つが医学部再受験だったんです。

 

会社を辞めたあと医学部を目指した理由とは?!

この続きは『番組ディレクターから医学部へ(2)』へ。

 

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