再受験生インタビューT.Sさん〜番組ディレクターから医学部へ〜(3)

元ドキュメンタリー番組制作ディレクター。卒業から4年後の医学部再受験。壮絶なディレクター生活を経て自身の人生について考え直し、医学部に入りなおすことを決めたという北里大学医学部2年生のT.Sさん。社会人時代から今の医学部生活、将来の話までをお話しいただきました。今回は医学部に入学してからのことや将来のことなどについて話していただきました。

自分のための勉強ができることが嬉しい

佐々木 以下S)実際医学部に入ってみて、今の学校生活はどうですか?

T.Sさん 以下T)楽しいです。まず自分のためだけに勉強できる時間があるのが嬉しい。仕事してるときは資格の勉強とかもしてみたかったのだけど、自分の時間が取れないからそんな余裕はなかった。今は時間があって嬉しいです。勉強をやらなきゃいけないのは苦しいんだけど、惨めにならない。そこが仕事と決定的に違うところですね。虚しくならないから精神的には全然追い込まれていない。それはすごく大事なことかなと思います。

S)自分のためだけに時間を使えるというのは贅沢で幸せなことですよね。友人関係についてはどうでしょうか。

T)初めは友達ができるかどうかすごく不安でした。この大学は現役生が多いと聞いていたので、最悪、友達は一人もできないんじゃないかとまで思っていました(笑)。でも実際は普通に学校に行けてるし、友達もたくさんできました。ずっと一緒にいると年齢は全然関係なくなるので、そんなに心配する必要もありませんでした。カラオケで歌う曲が違うとか、多少のジェネレーションギャップはありますけどね(笑)。

S)本当に年齢のことは忘れてしまいますよね。(*ライターも再受験生) 前の大学生活と変わったなと思うことはありますか?

T)まず毎日ちゃんと学校に行って勉強するというところが違う、というか大変ですね。僕は早稲田の頃のような生活が大学生活だと刷り込まれていたので(笑)。でもそれはそれで面白いです。大学に来ているというよりは、職業訓練学校に来ているという感覚ですね。毎日自分のスキルを高めるために通っているようなかんじ。それはそれで僕の性には合っているのかもしれません。

S)医学部でも私立は特に授業がぎっしり詰まっていて大変ですよね。他にはありますか?

T)昔と違って人間関係であれこれ悩むことがなくなりましたね。これまでいろんな人を見て来たので、人を許せる許容範囲が広がっているのかもしれません。それに加えて自分が周りより年上だという意識があるので、いろんなことを許せてしまいます。周りを若いなと思うことはありますけど、昔学生だった頃の自分を外から見るとあんな感じだったんだろうな、自分もああいう考え方をしていたんだろうなと思って、なんだか懐かしい気持ちになります。上から見ているというわけではないですが、現役生とは違う視点から物事を見ている気はします。

S)T.Sさんは周りから見てもやはり落ち着いていると思います。

 

人が集まり一つのことに取り組む面白さが好き

S)次は将来のことについてお聞きしたいんですが、何かプランなどは考えていますか?

T)特にこういう風になろうとかいう夢はなくて、今はとりあえず医師になりたいってだけですね。もっとビジョンを持った方がいいのかも知れないけど、まだ低学年なのであまりわからないというのが正直なところです。卒業までにいろんな先生に会って、あれこれと見てみて、それでピタッと来るものを見つけられればいいのかなと思っています。

S)しっかりとした将来プランがあるのかと思っていたので意外でした。

T)僕が今一番思っているのは、とにかく早く卒業して医師として働きたいってことですね。働くことって辛いし虚しいこともあるんですけど、逆に楽しいこともあります。それは自分が社会の一部に入っているという感覚です。大学だとあまりそういう感覚はないですけど、仕事をやってると自分が世界の中で役に立ってると思えるし、ちゃんと評価もしてもらえます。この社会の一部にハマってるという感覚はすごく気持ちがいいものなんです。

S)人に必要とされる感覚はやはり嬉しいものなんですね。

T)それに仕事場の雰囲気も好きですね。仕事仲間が毎日、同じ時間に同じ会社に集まって、同じ目標に向かって仕事をする。会社行くのが嫌な時もあるけど、会社に来ちゃえば気心が知れてる人と、「おっす」みたいな(笑)。言い表しにくいんですけど、そこには所属している心地よさみたいなのがあるんです。部活やってて部室に来るときの感覚がそういう職場の感覚と似ているかもしれません。それが面白いし、嬉しい。

S)そうすると、医者になってからそのような感覚を得られるのは開業よりは勤務医ですかね?

T)勤務医は楽しいんだろうなと思います。最近はチーム医療とかよく言われますけど、たくさんの人が集まって大所帯で一つの問題に取り組んでいくことがすごく好きなんです。昔から部活や生徒会など、いろんな考え方の人が集まってみんなで考えるのは面白いと思っていました。実際僕のやっていたマスコミの仕事はまさにそういう感じでした。バラバラの職種の人が集まって一つのものを作る。あの感覚がすごく好きです。だから自分の性分を考えるともしかしたら勤務医の方が合ってるのかもしれない。ただ一方でワークライフバランスを考えると開業医の方がいいのかも知れない。実際現場でやってみると自分が思っているのと違うこともあると思うので今はまだわかりません。その時になって考えようと思っています。

S)確かに働いてみないとわからないことだらけですよね。

 

再受験生の一番の悩みは結婚と家族

S)将来の話といえば、S.Tさんは昔から付き合っている彼女がいるとお聞きしましたが、結婚などは考えているんでしょうか?

T)彼女の話きましたね(笑)。はい、考えています。学生時代に結婚したいと思っていてます。結婚するなら今の彼女しか考えられないですね。彼女が30歳までに子供を産むとするなら、僕が医学部3年か4年までに結婚しないといけない。子供のこと考えると結婚は早い方がいいのかなと。ただいろんなことの兼ね合いかなと思っています。結婚は自分一人でするわけじゃなく相手のタイミングもありますからね。それに親のこと、彼女の仕事のこと、地理的な問題、子育てのことなどあれこれと考えなきゃいけません。例えば親のことで言えば、僕の親は自由な考え方を持っている方なので学生結婚でもいいと言うと思うんですけど、向こうは女の子の親ですし、経済力のある男の人と結婚して欲しいと思っていると思います。だから学生と結婚することについてどう説得しようかとか考えないといけませんね。

S)再受験生の結婚問題は永遠のテーマですよね。彼女さんはどういう考えなんでしょうか?

T)彼女も結婚したいと言ってくれています。なので結局落ち着くとこに落ち着くのではと思っています。ただ結婚するとしても今すぐするわけではないので、今は自分の勉強に集中しようと思っています。結婚してからのプランが具体的に想像できた時点でタイミングを見て結婚すればいいのかなと。やはり再受験生の一番の悩みは勉強より、結婚だと思います。勉強の体力の心配とかは、言っても一番年が離れてる現役生とでも10歳違いぐらいなので大きく引き離されることはないと思います。それよりも結婚や家族のことの問題の方があれこれ考えなきゃいけないので大変だと思いますね。

S)彼女さんはS.Tさんの今後の仕事の方向性についてはどう考えているんでしょうか?

T)彼女は僕に「自分のしたいようにして」と言って干渉してきません。彼女も仕事をしているのでちゃんと自立しているんです。だからこそ僕の受験も応援してくれたんだと思います。仕事をやめるか悩んでいた時は相談に乗ってもらったりしたんですけど、結局最後、自分の道は自分で決めさせてくれたましたし、その決定についてああだこうだとは言われませんでした。僕の選択を何も言わず受け入れ応援してくれたんです。だからこそ逆に、彼女が今やりたい仕事があるならそれをやってほしいと思っています。あれこれ僕のことは考えず彼女のやりたいことをやってほしいと思っています。

S)とても素敵な彼女さんですね。二人の信頼関係の伝わる良い話を最後に聞けてよかったです。本日は長い時間本当にありがとうございました。

T)ありがとうございました。

 

【編集後記】

柔らかな物腰で話すT.Sさんからは終始人柄の良さが伝わってきました。その一方で話す言葉には、壮絶な社会人生活を経験したからこその重みがありました。彼は学内でも非常に優秀な成績を収めているようで、学問においても、人としても、再受験生として見習うべき点がたくさんあると感じました。

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